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初演作品「ゆめみる〜Dreaming〜」について

 

岸部です。

WinterSeasonConcert(以下WSC)も、お陰様で5回目を迎えました。WSCでは第一回目からプログラムの流れは変わっておらず、前半はソロ、後半をアンサンブルでお送りしてきました。今回も同じ流れでプログラムを予定しております。

 

そしてWSCの新たな試みとして、演奏会全体のテーマを設定致しました。

テーマは「ゆめみる〜Dreaming〜」。また同名の作品を岸部が作詞作曲を致しました。

 

新たな作品を作って演奏する予定は当初なかったものの、自らのソロ曲を考えるためにテーマと向き合っているうちに、「ゆめ」という言葉の持つ自由さを感じるようになりました。眠る時に見る「ゆめ」、理想や目標の意味合いの「ゆめ」、幻想的な世界の「ゆめ」…等。その言葉の面白さと向き合ううち、詩や音として表現をしたくなり、作曲作詞、演奏をするという運びとなりました。

 

「ゆめ」というものは、基本的には自由で美しいものだと思います。しかしながら、現実を前にゆめはあまりに儚い。弱々しいものなのです。「夢ばかり見てないで、勉強しなさい」「ちゃんと現実を見なさい」なんてね。昔そんなことを言われたならばへそを曲げていたに違いありませんが、今は深く納得してしまうのでしょう。ごもっともだ、と。

 

しかしながら、同時にぼくは「ゆめみて」おります。

例えばまだ知らないような感動体験。

空を飛ぶ自転車、言葉を話すぬいぐるみ。

新しい出会い。友と過ごす時間。美味しいご飯。

 

自分が生きてきた短い時間の中でも、たくさんの発展を目にしてきました。白黒の画面だった携帯電話は、今や色がついて立体的に見えるような技術も生まれました。地球の裏側の人とも、瞬時に話ができるようになりました。ビデオカメラで撮影すれば、何度も同じ時間を過ごすこともできます。

 

そうした中で忘れてしまったあたたかさや、大切なものもきっとあるのかもしれません。しかし消滅してしまったわけではないと思うのです。

 

だから、ぼくはまたゆめみてしまいます。

これから生まれてくる新しいものと、忘れてしまったものとが共存するやさしい世界を。

時代や、人種や、立場に関係なく、誰もが自由なゆめをみられることを。

 

 

そんな静かな願いとともに、演奏できればと思います。

 

岸部洋介

 

 

 

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